第72話 散髪 12分間(2000. 9. 1)

 前に書いたのが第20話だったから、随分と経ってしまったような感じだが、何と言うことはない、2年前の話である(50話分も隔てるとつい昔のように感じてしまう)。筆者はその後も結局、散髪と言えばその店を利用しているので、ここ2年間、ヘアスタイルは同じようなパターンが続き、何の工夫も新味もなく、漫然としたものである。理髪店を選ぶ手間や煩わしさがないというのがこんなにありがたいとは... 無精者ゆえ、こんなことで嬉々としている。特に高田馬場にその店を見つけてからは、同じ店でも8・9割は高田馬場である(新橋界隈は1・2割。かなりの勢いでチェーン展開しているから、近所にできたらそっちになるかも知れないが)。思い立った時にフラっと行ける、そんな距離感がいいのである。

QB_HOUSE.jpg 夏真っ盛りで、さすがに暑苦しくなったものの、なかなか行けなかった高田馬場店。仕事を早く切り上げて向かったりもしたが、店の看板に表示される混雑状況信号機(青なら待機なし、黄なら待ち時間少々、赤なら結構待ちそう)が赤だったので、断念(実際、すごく混んでいたのだ)したりで、とうとう先の夏休み期間まで行くことができなかったのである。それだけ流行っている訳だ。

 お盆明けの17日、さすがに都内の人口が減っているとあってか、入店して早々、席に着くことができた。ここ2年間で大した変化はないが、この日は、従業員相互で夏休みを交代でとっているということで、(1)はじめから終わりまで一人の店員だったこと、(2)客が少なくヒマだったせいか、その店員(女性)がよくしゃべった、の2つが第20話と違った点だろうか。第20話では、店員と会話する必要のなさをこの店の一つの良さとして紹介したが、この日みたいにいろいろ根掘り葉掘りやられると、ちと考えてしまう。幸い、夏休みはいつまでだ、とか、どっか行ったかだとか、会話については無難な範囲で済んだが、心配していたアクシデントが... ちょうど頭のてっぺんあたりをバサバサ鋏を入れながら、当店の従業員の夏休みは...なんて話をしていた時である。いきなり話が途切れ、その店員、スーっと店の奥に引っ込んでしまった。話が高じるとやはり集中力が鈍るのだろう。どうやら指先をやってしまったようである(黙って鋏を扱ってもらっていた方が客としては安心である)。待つこと約2分間。

(店員)「いやぁ、ザックリやっちゃいまして...」 (客)「...(呆然)(*_*)」「声もなく行ってしまって...大丈夫ですかぁ」 (店員)「よくやるもんで馴れてますから」 (客)「...(二の句が出ない)」てな具合である。2分間も手当てしてたんだから、結構、深手だったようだ。左手中指の先は絆創膏ではなく、包帯である。しかし負傷しても相変わらずよく話をなさる。(店員)「今日はこのあとどちらへ」 (客)「千駄ヶ谷のプールにでも行こうかと」 (店員)「髪を切った後ならいいですね」 (客)「ハァ...」。

 その後は、相変わらずの電動カミソリ&掃除機ノズル&お手軽ドライヤーだったので、話らしい話はなく淡々と進み、途中退場の時間を差し引けば、お約束どおりの10分間で終わった。お見事である。今回の12分間、会話あり、アクシデントありでなかなかスリリング?!だったが、プールに行くというのを聞き知ったからか、やはり指先の負傷で手さばきが鈍ったからか、少々仕上げが雑な感じになってしまったのがマイナスポイントか。ニュービジネス大賞の受賞に続き、最近、グループ全店の利用者が創業以来300万人を突破するまでになり、お店自体はとにかく絶好調である。300万人達成を記念して、(知る人ぞ知る?!)「魚や一丁」の生ビール券を3枚いただいた(何で魚や一丁なんだろ?)。今回はこれでよしとすべきか。いろいろな意味で、プラスマイナスゼロの散髪12分間である。

 ちなみに、散髪後の筆者は身軽になったにもかかわらず、プールで泳ぐこと自体、実に久しい話だったので、その日は150m泳ぐのが精一杯だった。お恥ずかしい限り。(この話を書くまでの間、今年2回目のチャレンジではその倍の300m泳げたが、腕・肩が...)(^^;)

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