第60話 電車内でのマナー(2000. 3. 1)

 東京モノローグ、おかげ様でスタートから2年半が経過。第60話を迎えたことにひっかけてふだんから気になる話題(というかちょっとした義憤だが)を一つ。

 駅や電車は社会の縮図のような観がある。社会全体のマナーの程度を知るバロメーターとも言い得るだろう。マナーの良くない人に多く出くわすような時分には、大抵、世相が物騒だったり、暗かったり、ということが増えてくる気がする。駅を含めてそうしたマナーについて書きたいのはヤマヤマながら、駅となるとエスカレーターや階段から、構内の売店から、ホームから、果ては改札に至るまで、様々なシーンが想起され、とても書き切れそうにない。

 という訳で、今回は電車車内に限って書き出してみようと思うのだが、ただ書き連ねるだけでは面白くない。そこで、ご法度と思しき例を筆者独断でランク付けして、憤懣をぶつけることにした。少なくともここに書く範囲ではうしろめたいことはないので、揚々たるものである。(法に触れる行為や、明らかな迷惑行為は書くまでもないので除外する。)

 まずは惜しくも次点となった行為から。

次.スペースを有効活用しない。混雑に拍車をかける。

 第52話でも書いたが、程々のスペースがあるのに関わらず、相変わらず混雑を好む人が多いのには呆れてしまう。マナーの悪い人がいたり、悪臭がする、という事情で避けた結果、特定箇所が混むというならまだしも、そういうこともないのに、ただ漫然とかたまっているのはどうか、と思うのだ。ちょっと歩を進めて間隔を確保すればお互い快適に過ごせるだろうに。マナーという程のものではないと思うが、ひと工夫してもらいたいものだといつも感じる。

10.(始発や終電で見かける)ロングシートでの睡眠

 いろいろイヤなことや心労があってのことと思うが、いくら人が少ないからと言って、ロングシートいっぱいに寝そべって、ガーガーやるのはいただけない。終電で終着駅まで寝過ごしてしまっても、車両基地で一晩過ごしてそのまま始発、というのは余程のことがないと成立しないと思うが、中にはそういう人もいるだろう。それはそれで気の毒でもあるが、やはり周囲の人には迷惑この上ない。

9.優先席に堂々と座る。

 筆者が中高生の頃など、優先席に堂々と座るのは、見るからに不良っぽい輩か、タチの悪い中年くらいなものだったが、90年代以降、優先席はすっかり一般席と化してしまった感がある。何とも嘆かわしい。試行錯誤の末、阪急電車は全席優先席扱いにしたと聞くが、その方が単純明解でいいかも知れない。もっともあくまで優先なので、専用ではない(これは優先道路・専用道路と同じ解釈)から、優先すべき人が現われたら譲る、というのが趣旨なのだろうけど、斯様な語意をきちんと理解している人が多数派とは到底思えないから悩ましい。しかも、この趣旨に沿って優先席を譲ろうとすると、無碍に断るお年寄りもいるから、なお考え物である。

 自慢ではないが、どんなに閑散としてても筆者は優先席に座ったことは一度もない。又、席を譲るべき状況に遭遇した場合は「どうぞ」とは言わず、次の駅でいったん降りてしまって、別の扉から乗るようにしている。その方が遠慮なく座ってもらえるからである。

8.車内の貼り紙・吊り紙の損傷

 気に入った芸能人の広告を失敬してしまう不届き者もいるが、それは言語道断(立派な盗難であり、営業妨害)なので、ランク外。失敬しようとした跡か、破れていたり、はがれかかっていたり、というのも時々見かける。まじめな中吊り広告で読みたい部分が失せているのも困りものだが、もっと困るのは、扉の上部にスライド状に入っている「停車駅案内」などが一部破損していて、駅名がわからなかったり、という事態だろう。ラッシュでつかまるところがなくて、苦し紛れに破いてしまったのなら目を瞑るが、単なるいたずらだとしたら、ハタ迷惑な話である。

7.席が空いているのに座らない(空いた席の前に立ちふさがる)。

 優先席だろうが何だろうが座りたがる人がいる一方で、何故だかわからないが、立っていて目の前が空いたのに座らない人もよく目にする。他に座りたい人がいるとしたら、そのまま立ちはだかっていては邪魔極まりないのだが、多くは全く素知らぬ態である。ちょっと横に逸れるだけでいいのに、どうしてできないのだろう。よける余地がないなら致し方ないが、そんな時はただでさえ混雑しているのだから、座りたくなくても座るのが礼儀だと思う。その人が座ることで立っている人には空間的余裕ができるのだから。

6.化粧+足組み(しかも厚底靴で)

 最近はあまり見かけることはないが、大きな鏡、大きなブラシを取り出して、パタパタシャカシャカ、というのは見るに堪えないものがある。本人は実は淋しがりやで、そういう行為で気を紛らわしたり、人目を惹くことで自己確認しているんだろう、というのが当たっているなら、多少大目に見ようとも思うが、いやいや。ある日、立川から乗った南武線車内で見かけた時は、延々と30分以上も興じているので、一体何にそんなに時間を要するのか、と些か腹立たしさも覚えた。

 化粧だけならまだしも、そういう化粧っ娘は決まって厚底靴だったりするので、二重に厄介である。あの厚底で堂々と足組みでもされたら、仮に車内が空いていても、通路を通る時、チョー障害物である。

5.急乗車、急降車。急降車をさえぎる 降りない&よけない行為。

 いわゆる駆け込み乗車だが、それだとどうもインパクトが弱いので、「急乗車」と筆者は言っている。戸口にいる時は、急乗車する人から受ける被害(圧迫、踏み付け等)を防ぐため、突っ込んでくる人がいたら、いったん降りて交わして、乗り直すようにしている。

 急乗車よりもっと考え物なのが、急降車である。某栄養ドリンクの宣伝でもあったが、急に気付いてあわてて降車する人は本当にブーイングものである。予期せぬ混雑に見舞われて、その人なりの「降車シナリオ」が崩れてしまった場合は致し方ないが、全くの無計画降車は遠慮してほしいものだ。

 さらにそれに輪をかけて困ってしまうのが、そんな急降車をわざと邪魔するかのような周囲の非協力さ加減である。ちょっと詰めるなり、戸口にいる人はちょっと降りれば良さそうなものだが、周りが冷ややかだったりすると、その周りを巻き込んでの一大パニックに発展する。ブーイングはもっともなのだが、自他ともに活かす途を考えて、ちっとは協力すべきだろう。

4.集団圧力をかける。(例:サッカー少年団、ハイカーズ...)

 これは駅のホームにおける場合が顕著だが、とにかく群れる人達の悪態ぶりは目に余る。酔っ払い集団も渋面モノだが、もっと困るのは、一つはいわゆる少年サッカー系のこどもたちとその引率者の一団、もう一つはご年配のハイカー(又は登山者)集団である。

 まず前者。電車に乗り込む時の無秩序さは際立っている。この間など、近づく電車に蹴りを入れている野郎を見た。こういう団体の引率は母親の場合が多いが、多くは話に夢中で少年達が何をやっていようとお構いなし。その母親のファッションがまたワンパターンで、丈の長い薄手のジャンバーコートか何かで、ポケットに手を入れたままフラフラしているから、見るからに「なんか文句あんの」と威圧するかのような態である。電車に乗ってからの彼等の行動形態は推して知るべし。

 後者は何と言っても席の争奪戦&車内での大騒ぎが特徴的である。出かける先が中距離なので、クロスシートの車内でよく見かけるが、空いた席を目がけて突進する様は筆舌し難いものがある。うまく向かい合わせのクロスシート(四人様席)をまるごと押さえられたら最後。車内宴会のはじまりはじまり、である。座れなかった場合は一転して穏やかなもので、荷物を前に抱えるなり、棚に載せるなりでマナーにおいても敬服させられるのだが、席に着く着かないで、どうしてこうも極端なものかと慨嘆してしまうのである。

3.缶飲料の飲み残し、スナック菓子の食べ残し等の放置

 特に暑い季節は清涼飲料の缶が飲み残しが入った状態で車内の床に立てて置いてあることがある。ずっと立ったままという保証があるならまだしも、加速や揺れの激しい列車では横転するのは目に見えている。飲み残しが毀れて拡がった折りには悲惨である。糖分の濃い飲み物の場合、ガム同様、踏んづけるとベタベタして気持ち悪いことと言ったらない。

 飲み残しがなくとも空缶が転がっているのはやはり困りもので、これがもとで無言の足々による責任のなすりあいが始まってしまうから嘆かわしい。筆者の足元に転がってきた時には、ひとまずキープして、降りる時に拾い上げて、最寄りの空缶入れに放るようにしている。無言でさりげなく、がポイント。

2.携帯電話

 大声でのやりとりがうるさいから、とか、着信音(他に個性を反映させるツールはないものかと思う)がやかましいから、というのは確かにそうだが、携帯電話は何が害かと言えば、何はさておき電磁波だと思う。音が漏れないように工夫しつつ、車内で静かに音楽を聴いていると、にわかに耳を低く震わす不快な振動音が伝わってくる。不思議に思って周囲を見渡すと、必ず近くで誰かがケータイで話をしている、というのが判明した。もともと旧式かつ安物のカセットプレーヤーで、それに付属するイヤホンを使っているせいだが、ホンの磁石?!が電磁波に反応して、唸りを上げていたと推定される。この共鳴を手がかりに、どこでケータイを使っているか探知できてしまう(これぞ逆探知?)訳だ。

 これは耳にも脳にも悪そうだ、というのを身を以って体感している筆者は、人一倍ケータイには警戒心を持っている。ただのイヤホンでこれだから、ペースメーカーへの影響は尋常じゃないだろう、とつくづく思う。今のところ、事故例は聞いていないが、ケータイがもとでペースメーカーが誤作動して死に至らしめるようなことがあったら、使っている本人はどうするつもりだろう。犯罪行為になる前に自制すべき、と強く思う。(余談だが、筆者はケータイ不携帯(不所持)者の一人である。)

1.嗅覚へのダメージ

 見たくないものは目を閉じればいい。聞きたくないものは耳を塞げばいい。だが、嗅ぎたくない匂いはどう防げばいいだろう? 電車車内は走っている間は言わば密閉空間である。窓が閉ざされた状態では、不快な匂いに対して抗う術がない。これは何にもまして困った事態である。

 当事者はあまり気にかけないだろうが、例えば独特の匂いを放つ煎餅や酒のツマミの類は耐え難いものがある。新幹線やホリデー快速などでこれをやられる分には、行楽の要素があるから、我慢すべきと言われればそれまでだが、帰りの通勤電車の車内で缶チューハイ片手に各種強烈な匂いを発散された折りには、憤怒やる方ない。こういうのに遭遇したら、注意したところで絡まれるのがオチだから、場を離れるか、車両を移るしかなかろう。

 汗臭さや酒臭さも然り。何故かアンモニア臭が漂うこともあるが、いずれにしろ太刀打ちできない。強力なマスクをするなり、お気に入りの香り小袋か何かを常時持ち歩くなりして、自衛的に不測の事態に備えるしかないのだろうか。とにかく車内の匂い問題は筆者にとって重いものがある。

・・・

 つい力が入って長文(60話中、最長の4,500字超)になってしまったが、これをお読みの皆さんの中で仮に気を悪くされた方がいたら、どうか一つご勘弁の程を。(もし「こんな事例の方が許せない」というのがあれば、ご一報いただけると幸甚である。)

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