第52話 集中('99.11. 1)

 常々疑問に思っているのだが、人の動きや流れはどうして集中するのだろう。集中というか、連鎖といった方がいいかも知れない。何となく疑問に感じ始め、よく観察するようになって、いよいよその意を強くした次第である。

 まず、電車の乗り方。予め、目的駅の階段の位置を覚えていて、そこから降りるのが都合がいいとわかっている場合であれば、決まった戸口から乗るのは、理に適っている。しかし、どう考えてもどの戸口から降りても良さそうな場合、例えば山手線内で混み合う線区(渋谷→新宿など)では、よほど待合せの改札やお気に入りの階段でもない限り、渋谷駅でどの位置から乗っても、新宿駅で降りる位置について大して構う必要はなかろう。しかし、ある車両に乗り込んで、周りを見渡すと、奇妙なことに特定の戸口だけ混み合っていることがある。「空いている戸口からご乗車ください」なんてアナウンスがあっても、どこ吹く風である。もちろん、階段付近の戸口だと駆け込み乗車で一時的にそこだけ混み合うことはあるが、そんな駆け込みと無縁な場所で混んでいるのを見かけるものだから、首を傾げてしまうのである。横着な人が多いのか、混雑に無頓着な人が多いのか定かでないが、どうせ乗るなら少しでも広々と過ごせた方がいいのに、といつも思う。(筆者はちょっとでもそうした集中傾向が出ると、空いているところにさっさと移動してしまうようにしているが。)

 ある飲食店の前で、メニューを見ながら立っている。するといつしか人垣ができ、その後から来た人たちがどっと先に入ってしまうことがある。不承不承、後塵を拝しながら店に入ると、その後何分もの間、客が入って来ないことがある。これはいったい何なのか? 店の人にとっては、急にいそがしくなったり、ヒマになったりで大変だろうにと思う。この前、田町の図書館の下にある食堂に入ろうと思って、一人静々と店に入ったら、知らず後をついてきていた若いサラリーマンに先を越されてしまった。11時を回ったばかりで、まず客が集中する筈がないのに、である。呆気にとられながら、日替わり定食を食す筆者だったが、とうとう食べ終わってもなお次の客は来なかった。何であの1分にも満たない間に二人、客が続くことになったのか? 最近では、人垣ができたらとにかく先に入れて、しばらく経って時間差を付けてから入るようにしているので、不快な思いをせずに済んでいるが、未だ謎である。

 こうした例は他にも、公衆電話、公衆トイレ、銀行のATM(出張所タイプ)、コンビニでの買い物、エレベーターなどなど、閑散としている時間帯にも拘わらず、連鎖的に人が集中する場面によく遭遇するのだ。逆を言うと、微妙に時間差を作れば、単独で余裕を以って使える、ということである。おそらく、通常は単独で使える場合が当たり前なので、ちょっとでも偶発的に他人の動きとシンクロしてしまうと、やけに気になる、ということなのかも知れない。それにしても、そのちょっとが多い気がするのである。

 滅多に車に乗らないので、本来どうあるべきかがよくわからないのだが、高速道路を走っていると、必ずダンゴ状態になっていることに気づく。つまり、ダンゴの車の群れがひとしきり去ると、空隙が生じ、しばらく走っていると又、次のダンゴがやってくる、という現象である。筆者は群れて走るのが大嫌いなので、そのダンゴの間を走るようにしているのだが、これもなぜ、人(というか車)の流れ・動きが集中するのか、疑問に思わせる一例である。高速道路では固まって走るのが常識なのか、それとも空隙を安穏と走る(セーフティドライブ?)のがいいのか、どっちだろう? ダンゴになるのをあえて好む人が多いということであれば、電車の乗り方にしろ、飲食店の入り方にしろ、合点がいくのだが、人間の習性って、そういうものなのだろうか? 飲食店を例にとれば、確かに一人で先陣を切って入るのは、勇気が要ることもある。そんな時、固まって入れば、何の不安も躊躇もないのはもっともな話。でもそれじゃあまりに工夫がないというか、自発性・自主性がないように思えてならない。

 人はあまりこんなこと考えず、単に群れている(タイミングが重なるのを良しとする)だけだと思うのだが、少し工夫して集中を回避すれば、待ち時間やイライラやいろいろなロスが減るんだ、ということも心したいものである。

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