第66話 キャラクターの公共性(2000. 6. 1)

 銀行間での競争原理が何となく働き出したあたりから、往年のアニメなどのキャラクターやマスコットをやたら銀行店頭で見かけるようになった気がする。競争はすれど、日本の都市銀行の横並び体質は結局同じ。某海外系金融機関のように通帳をなくすとか、土曜日も窓口を開けるとか、どんな時間の出し入れでも手数料無用とか、そうした利便性やサービスの質で競うことはない。いかに大御所のキャラクターを取り込むかで競っているようで、何とも心寒い。(キャラクターは違えど、それに依存しようとする点では所詮横並び。)

 もちろん、そのキャラクターを愛好する人にとっては、どんな形であれ各種キャラクターグッズが手に入る喜びは代え難いだろう。しかし逆に、真摯にそのキャラクターに思い入れがある人には、某銀行の店頭やら窓口やらでそのキャラクターが氾濫している様(まして通帳を持たされたり、ATMで出し入れしている絵だったりしたら、なおさら!)を心から良しと思えるだろうか。昔見たテレビ画像の中、昔買ってもらったおもちゃや人形など、本来なら淡い記憶とともに大事にしておきたいキャラクターが、やたらクッキリした配色で、でかでかとポスター化されて掲げられていたら、全く以って興ざめだろう。仮に、その人にとってかけがえのない「想い出の形」たるものが擁護される、という権利保証があったなら、その侵害にあたることにもなるように思う。

toyo.jpg 銀行とキャラクターの相関関係で、主だったものを挙げてみよう。ざっと次の通りである。

あさひ銀行:ミッフィー、三和銀行:スヌーピー、第一勧銀:ハローキティ、東海銀行:バックスバニー、東京三菱銀行:ディズニー、東洋信託銀行:ケンケン(チキチキマシン)、北陸銀行:ムーミン、三菱信託銀行:ピーターラビット、横浜銀行:トムとジェリー...

 さくらと住友、第一勧銀と富士など、大合併を控えているところは、今後、こうしたキャラクターをどう扱っていくのかが見モノだが、合併後に軽々とキャラクターをとっかえたり、別のキャラクターに乗り換える、といったことが起こるとしたら、まさしくキャラクターを軽視している証拠(単なる客引きの道具という捉え方)だし、心からの愛好者に対する無礼にあたると思う。その人にとってのかけがえのない想い、というのはどのキャラクターにもきっとある訳だから、それを毀損せしめていい道理はない。元来、キャラクターというものは(年を経たものであればある程)、公共財に相当する面がなくはないと思うのである。申し訳のように、CやRを○(まる)で囲んだものが隅っこに併記されてはいるが、いくら使用権を得たとしても、いくら使用料を支払ったとしても、特定の事業者が特定の商業目的に使うのはいただけないと感じるのは筆者だけだろうか。

 キャラクターやマスコットを設けるなら、独自のものを生み出し、育て、いずれは社会的に愛されるものにしていこう、という方がはるかにいいし、企業姿勢としても評価できる。実際、企業キャラクターが国民的アイドルになっていったケースは山ほどある。カールおじさん、クロネコヤマト、ケロヨン、チョコボール、不二家、ヤンマー...最近ではモモ、ドーモくん、QOOあたりだろうか。ユニークで楽しいものが多く、直感的に企業を覚えてもらえることにもなる。キャラクターはオリジナルに限る、と思う。

 よく考えると、具体的な製品やブランドを持たない企業(特に金融・保険系)、かつ羽振りのよい業界がキャラクターを濫用する傾向にあるようだ。住友生命のピングーはまだいいが、某消費者金融でサイボーグ009が出てきたのにはあきれてしまった。キャラクターの持つ公共性を損なうこと必至だろう。

 キャラクターに限らず、往年の大女優を飲料の広告で使うのもどうかと思う。バックに流れる曲がクラシックかイージーリスニングなどならまだしも、よりによってCHARAだったりするから、余計によろしくない。名画の中で大事にしておきたい「絵」や往時の想い出を大事にしている人にとっては、気分を害されることこの上ないのではなかろうか。これには違和感を覚えずにはいられない筆者である。

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