第2話 南北線、南へ一歩('97. 9.30)

 全国の地下鉄で南北線というと、札幌と仙台を走る線が思い起こされる。特に札幌の南北線は、東西・南北に整然と格子をなしている道路の下を走るため、名の通り南北線と呼ぶにふさわしい。が、東京のそれは確かに北と南を結ぶゆえ、南北線には違いないにしても、あっちで曲がりこっちで折れして、南北蛇行線とでもいった趣である。

 さて、その南北線が南?(今回は正確には南東)へ向かって新たな路線を開いた。赤羽岩淵~駒込で始まった区間があれよあれよで四ッ谷まで南下し、とうとう今回、これまで鉄道空白地帯だった溜池に、銀座線のタイアップのおまけつきで、新駅開業+起点の延長にこぎつけたのである。溜池と言えば、首相官邸や、アークヒルズの近所という印象が強いが、古くから山王(山王下)という由緒ある地名もあって、駅名ではいろいろもめた経緯がある。当初の溜池駅から溜池山王駅になったのには、それ相応の理由がある訳だ。(他にも、半蔵門線の水天宮前(最初は蛎殻町だったが、箱崎にしたいとの案が出て、紛糾)や新幹線の合成駅名(水沢江刺、燕三条、安中榛名等)が妥協の産物型駅名として名高い?)

tameike-sannou.jpg 何かにつけ初日に目がない筆者は、早速、会社帰りに渋谷から銀座線に乗り込んで、わざわざその溜池山王に向かうことになる。赤坂見附と虎ノ門の間は、都心にしては珍しく駅間が長いことで有名だった。ようやくそのほぼ中間に駅ができた訳だが、試しに赤坂見附~溜池山王の所要時間を計ったら、一分余りであった。表参道~外苑前と同じような感覚(間隔)である。ホームに降り立つと、およそ往年の銀座線の駅とはかけ離れた明るさに広さ。しかし見渡すと上り階段がない。何と改札と出口が下り階段を降りないと出てこないという、銀座線(地下浅くを走る路線)ならではの仕掛けには驚かされた。(もちろん表参道など他にもあるが) 開業時につきものの記念スタンプを押して、改札を出る。改札付近には駅員が何人かいて、乗客の問い合わせにまめまめしく応じている。これまた開業時ならではの光景である。

970930_2.jpg とりあえず溜池交差点に出てみる。しばらく見ぬ間に、首相官邸を取り巻いていた木々がなくなり、きれいな建物が代わりに肩を並べている。首都高速のガードも化粧直ししてあるし、チェーン系の飲食店もいくつかできている。新駅ができるとずいぶん華やぐものである。地元商店会などは、開業記念セールに余念がないようだ。貼り紙が店先を賑わしている。ふと国会議事堂方向に目を向けると、ぽっかり土地が空いていて、何やら基礎工事をしている。そう、ホテルニュージャパンがあったところである。山王共同ビルというのができるらしい。その隣が日枝神社で、いわゆる山王にあたる。交差点とバス停は溜池だから、両方とって溜池山王でよかったんだな、と妙に納得してしまった。

 アークヒルズへ向かう一筋の地下通路ができていた。動く歩道がないから、距離感を感じる。が、雨風の心配なく、地下鉄で通えるようになれば申し分ないだろうと思う。その通路を背にして、帰りは、めでたく延伸した南北線に乗り込む。ホームに着いてはっとしたことがいくつかあって、まず、降車用と乗車用と番線が分かれていること。着いた列車はいったん回送になって、車庫に入るとのアナウンス。確か四ッ谷までだった時は、着いたらそのまますぐ乗れたと思ったが。南北線も箔がついたものである。お次は、乗り換え案内の表示。これまでは営団各線の色分けしたカラーマーク(ドーナツ状の円)が矢印と一緒に表示してあるだけだったが、何とその円の中に乗り換え線のホームまでの距離が記されている。赤丸の丸の内線は470m、緑丸の千代田線は140mとなっている。これは名案だと思った。そして、極めつけはホーム外壁の「アートウォール」。日本の四季折々が伝統的画法によって壁いっぱいに繰り広げられている。粋なものである。乗り込むと今日はこのまままっすぐ一本。28分で終点、赤羽岩淵に着いた。

970930_1.jpg これで「溜池山王<->赤羽岩淵」という四文字駅名を起点・終点に持つ何とも重厚な路線になった南北線。溜池山王からは、さらに目黒まで延び、現・東急目蒲線に乗り入れ、多摩川園まで。多摩川園からは、そのまま東急東横線につながり、横浜へ。横浜から先は何とみなとみらい21線という新地下鉄に乗り入れて終点は、元町中華街(これも妥協の産物駅名になる予定)というから、南がかなり極まる格好になる。一方、北に目を向けると、赤羽岩淵から、90度カーブして、目指すは川口東部と鳩ヶ谷市以北。赤羽岩淵から浦和大門までの区間は埼玉高速鉄道という第三セクター路線に乗り入れることで、北も極まるようになる。営団地下鉄南北線自体は小粒でも、相互乗り入れの集大成で、東京を貫く南北の動脈ができあがる訳である。北赤羽に住む筆者としては、赤羽岩淵からそのまま素直に掘り進んで、JR埼京線の北赤羽駅とのアクセスができればすばらしいなどと思ってしまうものの、やはり北進を考えて、90度カーブさせるプランに敬意を表することにした。赤羽岩淵までは徒歩約15分だから、まぁいいかの心境である。この東京23区の北の端から、電車一本でランドマークタワーやマリンタワー、そして中華街にも行けるようになるというのは、考えてみれば凄いことである。早く「元町中華街」行きとやらに乗ってみたいものだ。

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