第37話 「およげ!たいやきくん」('99. 3.15)

 昭和50年12月25日発売というから、筆者がなんと小学校1年生の時のクリスマスである。クリスマスに「およげ!たいやきくん」というのも似つかわしくないと思うが、あの哀愁漂う曲調は冬場にはうってつけ、とにらんでのことだったのかも知れない。あれよあれよで売れに売れて、その筋の専門書を見ると、453万枚売れたことになっている。これまで日本国内で発売されたシングル盤の売上枚数トップである(だった)ことは言うまでもない。どんな大物アーティストでも1曲のシングル盤でこれほどの枚数を売り上げるのはなかなか難しいもので、「およげ!たいやきくん」に続く歴代2位の曲「女のみち」(宮史郎とぴんからトリオ)に至っては、325万枚だから、図抜けていたことがわかる。思い返せば、筆者もねだってドーナツ盤を買ってもらい、家で何度も聴いていたのを思い出す。1枚目を割ってしまい、2枚目を買ってもらったが、これも何かの弾みで割ってしまい、幼い頃ながら、ドーナツ盤のはかなさを思い知らされたものだ。自発的意思でレコードを買ってもらったのは、これが最初と記憶しているので、記念すべき盤を持っていないのは何とも惜しまれる。(どこの家庭でも筆者と同じように2枚買ってもらっていたとしたら、その分売上枚数が増えてもおかしくないような気もする。)(^^; ドーナツ盤→壊れやすい→こどもが聴く・扱う可能性が高い→壊れる可能性も高くなる→2枚目を買う? というフローが成り立つのでは、と勝手に推測してみたりもするが、ともあれ、こうしたこども向け番組から世に出た曲が、日本のトップセールスシングルの座を君臨してきたことは、日本の音楽文化の健全さを示す事例としても誇っていいと思う。

 さて、巷では24年ぶりに、この「およげ!たいやきくん」の記録を塗り替えそう、てな話題で持ちきり。「だんご3兄弟」が売れまくっている。初登場週の週間売上の最高記録はもちろん、破竹の勢いで、「女のみち」の枚数を上回ってしまった。もともとタンゴのリズムが受け容れられやすい日本の文化事情に加え、N社「バザールでござーる」、S銀行「くまのバンクーくん」に通じるあの独特のキャラクターデザインと文字の書体の愛着感、さらに、こども番組によるこども主導の人気・ヒットと来れば、流行らない訳がない。既に「談合3兄弟」「残業3兄弟」といったパロディが出ている(筆者の予想では、京都府北部の観光キャンペーンか何かで「丹後3兄弟」なんてのが出てくるのも時間の問題と読んでいる)ことだし、今年の流行語大賞に当確しそうな予感も十分にある。だんご市場の活性化で景気が良くなろうものなら、その後の好景気は「だんご景気」ってことになりそうだ。いやはや...

 余談だが、皆川おさむが歌ってヒットした「黒ネコのタンゴ」は223万枚売れている。ただでさえ、タンゴは売れるのである。「だんご3兄弟」がどこまで売上を伸ばすか、実に楽しみである。

 日本を代表するシングル盤の話が出たとこで、ちょっと話題を変えて、日本のポップスについて言及したいと思う。先日、実家に眠っていた資料を掘り起こしたところ、1986年暮れから87年初め頃にかけてのFM番組で放送された「ジャパニーズ ポップス ベスト100」に関する筆者手書きの資料が出てきた。エアチェックしながら、一所懸命リスト化したものだが、その放送当時を基準に、その前の15年間、つまり70~80年代の日本のポップスをリクエスト投票した結果といった感じである。当時の人気を反映してか、渡辺美里やTMネットワークが上位に入っているのが特徴的である。さすがに「およげ!たいやきくん」はないが、いわゆる売上枚数によらない、「心の音楽」といった有名曲がラインアップされているように思う。シングル盤で出たものが中心だが、シングル発売されていない隠れた名曲も多数ある。放送でかかったのは、一部の曲だったため、今なお聴き知らない曲も多い。このリストをきっかけに音楽探訪してみようかと思っている。(皆さんが青春時代をふりかえる時のお役に立つことを願って1~100位まで全て載せます。→PDF

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