随筆「東京モノローグ2006」(9−10月期)
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第219話 散髪 30分間 / 第218話 浸水想定深を探る / 第217話 あらかわ号乗船レポート〜足立区小台の漂流ゴミ / 第216話 ビール缶の彩色

第219話 散髪 30分間(2006.10.15)

赤羽駅改札外にあるQBハウス店頭にて 例の10分系散髪スポットでの1000円は、時間を買う(つまり速さがウリ)、という観点からすれば妥当ではある。(「あなたの時間を大切に」とある。) だが、同じ1000円で散髪してもらえるなら、もうちょっとゆとりを持ってじっくり、というのがあっていい。

 チケットを買って、カットしてもらって、吸引ホースで髪の切屑を除いて、サッとブローしておしまい、というフローだけを真似た自主努力不足の紛い物店舗も目に付くが、とにかくカットだけに絞って1000円で収めてくれる店やバリエーションが増えてきたのはありがたい限り。

 筆者が散髪に行くのは、年に4〜5回、いや下手をすると3カ月に一度ペースで年に4回行けばいい方、というのが近年の傾向。そんな筆者を支える心強いカット専門店が地元赤羽にはある。今さらではあるが、しっかりカットしてもらえるからこそ、3カ月放っておいても何とかなる訳で、件のQBでは意図的に3カ月以内に来ないと大変な状態になるようなカットの仕方だったのではないかと訝ってしまうほど。年に5回というのは、QBを専ら利用していた時期の話。要するに来店回数が減らないよう、あまり短く刈らないでおこう、ということなのかも知れない。ムムム。

店名は「ミルクキッズ」、看板は「MILK☆K」 さて、そのカット店、フランチャイズ型で店名が複数あるようだが、赤羽ではMilk-kidsで出ている。いわゆる理髪店が模倣するような1000円店ではなく、美容院タイプなので、それだけでちょっとリッチな気分。QB慣れしていた筆者にとっては当初敷居が高かったのだが、妻君(「めぎみ」と発音すると他人の妻なんだそうだが、ここは筆者流に「つまぎみ」と呼び、敬意を表している。いや謙称としては「細君」の方がいいか)の仲介で活路が拓けた訳である。

 QBは相変わらず根強い人気があるようで、新規出店もめざましい。(赤羽駅には改札内と改札外に2店舗ある!) 決して悪くはないのだが、筆者的にはそろそろ目先を変えて、という思いもあった。そんな折り、それは2005年7月30日。記念すべき初来店を果たすことになる。7月31日夜からは「国際イルカ・クジラ教育リサーチセンター」の万博出展「1・2・3・Sea・Go!! 館」のお手伝い。つまり、その万博出張に発つ前日である。これまでカットした直後は髪型がイマイチ冴えなかったが、今回はバッチリ&サッパリ。いい状態で万博に臨めてありがたかった。

 2回目は、2005年10月10日。万博の9月出展が終わって2週間ほど経ったところでの散髪で、一つの節目となった。

 同店では男性スタッフが限られているので、おのずと店員さんご指名のようになるのが特徴。たまたま初回が男性で、イイ感じにやってもらえたものだから、その後は指名式で定着。髪のクセもわかってもらえるから、余計なことは言わなくて済むし、気楽なものである。(10分では済まない分、客と店員の間の空気が時には間延びすることもあるが、別にお構いなし。)(^^;

 てな感じで、次回も行くべし、と思っていたが、あれよあれよで3カ月。予約を入れれば済むものを横着し、ふとした空き時間を狙って再び例のQBに行ったら、やはり持たない。1月16日に散髪したのだが、3月にはもう収拾がつかなくなってしまって、脱QBを決意した次第。QBだと髪型が定まらないことが多い上、来店サイクルが短くなり、出費がかさみそうなことがこれでわかったので、ここはきちんとMilk-kに行って「修復」を図る。3回目は、4月2日。年度始めの散髪である。

 その後、またまた3カ月近くが経過。6月下旬に入るとさすがにちょっと乱れがちになってきた。7月1日は、「知床・らうす会議」関係の出張(参考⇒前編後編に発つ前日。出張前やら、上期・下期の初めやら、ちょっとした節目に行くのがお決まりのようになってしまった。

宿での食事例(バイキング形式なので、ついつい... こんな感じで4泊5日) 魚の城下町として知られる羅臼。当地でこれでもか、という程、良質の魚介や海藻類を食したせいか、髪もさることながら、筆者史上初とも言える髭が伸び出したのには仰天。これは面白いと悦に入って、不評ながらも無精ヒゲを2カ月ほど蓄えてみた。2006年夏のちょっとした余興である。髪の伸びを髭にしばらく転化したことになったのかはいざ知らず、2カ月以上経ても、髪はまだまだ、といった感じだった。だが、髭を剃り落とすと心なしか髪が伸び始めてきて、9月中旬を過ぎたあたりから、まとまりがつかなくなってきた。

「クリーンアップ中は、髪はサッパリと」なんて注意書きはないが... 9月16日の鵠沼のビーチクリーンアップの前でも後でも、とにかく髪もクリーンアップと思っていたのだが、ついつい時は過ぎる。髪をかき上げつつ、ゴミを拾ったり、調べたり、というのがこの9月16日以降、9月30日(東四つ木)、10月7日(堀切)と続き、さすがに煩わしくなってきた。特に7日のクリーンアップでは、暴風低気圧の名残で、晴天なのに強風、という状況下、髪を振り乱して作業することになり、為す術なし。ある意味、躍動的な実践例として絵になっていた可能性はあるが、クリーンアップだからこそ、スキッとした出で立ちで臨むのが本道だろう。主催者・参加者の皆さんに対して礼を失してしまったなぁ、と反省モードである。

 細君と同じ時間帯で、となるとなかなか予約しにくいが、ようやく二人の都合がつくところで、10月14日の14時に予約を入れる。7月にお世話になった際、次は2カ月ちょっとで、とか言ってたのに、結局10月中旬になってしまった。(細君は急遽出勤することになったため、筆者単独で行くことに。そういうことなら、もっと早くに行くんだった?)

 予約時にわかっていたことだったが、これまで4回担当してくださった男性スタッフは埼玉方面の店舗に異動に。今回は短期契約の男性スタッフにやっていただいた。ストリート系(?)な感じで、いささか不安もあったが、特に後半、バサバサと鋏で梳くあたりからペースが良くなってきて、もみ上げをつまんで、しっかり左右の長さを確認しながら整えていくなんてのも細やかで良かった。QBと違って、無粋な吸引装置は使わず、髪の残りはシンプルにドライヤーで飛ばす。14:30に終了。見事に仕上げていただいた。

 QBだと10分程度のところ、今回の「Milk☆k」では実に30分間。じっくりとやってもらって、再びスッキリ。これで1000円では申し訳ない。同店でカットしてもらった以上、しばらくは持つ訳だが、年内に行くか行かないか、悩ましいところ。(また年越しか?)

 今回担当していただいたお兄さんは残念ながら、次回はもういらっしゃらない見込み。少なくとも一人は男性スタッフが配されるはずだから、また男性を指名すればいいんだろうけど、場合によっては、女性スタッフにお願いすることになるか? でも、QBで女性にカットしてもらった時は、第72話のようなエピソードがあるから、どうもなぁ...

第218話 浸水想定深を探る(2006.10.1→3)

第217話の続きです。

 9月9日の講座&ワークショップでは、非常食をうまく使っての昼食をいただいた。河川事務所の備蓄保存食ということだったが、五目ごはん・山菜おこわ・梅がゆの3種類のレトルトタイプの米飯(どれか一つ)をメインに、非常食缶詰の惣菜の数々、加えて、お餅(あんこ・きなこ・いそべ)まで出てきたのには驚いた。非常用とは言っても、相応のクオリティがなければ逆効果ということもあり得る。被災時はいろいろな意味で意気消沈してしまうところ、非常食で少しでも元気を取り戻せるなら、決して侮ってはいけない。今回の非常食は十分賞味に堪えるもので、妙な安堵感を覚えた。(もちろん、非常食にお世話にならずに済むに越したことはないが。) なかなか味のあるプログラム設定である。

 午後の部は予定通り、ハザードマップ(標識、避難場所)を自身で実体験するプログラムが行われた。班ごとにルートが設定され、妻君と筆者を含む班は、知水資料館を出て新河岸川を渡ったら、すぐに岩淵町を縦断して北本通りに抜けるルート。北本通りから東本通りに入り、赤羽駅南口〜北口と廻って、避難場所(今回は旧・赤羽台東小学校)をめざす。

 渡された地図にはチェックポイントとして、「浸水想定深」(⇒詳細の標示を含む、避難場所案内標識のおおよその位置が付されている。この標識、北区で先行的に試行(⇒詳細されているんだそうで、荒川氾濫時に水没する危険性の高いエリアを中心に、区内の74箇所に配置してあるとのこと。

 その74のうち、地図を頼りに6箇所分を見つけて、それぞれ最大何mの高さまで水が来てしまうのかを実感しよう、というのが趣旨。(そう言えば、筆者宅の近所でも見かけていたけど、まさか北区が先行例だったとは! 先行して取り組まないといけない、ということはそれだけリスクも高い?と訝ってしまう。)

 実際に大洪水になったら、この標示も水没してしまうため、実用性としては"?"だが、予習というか防災意識を喚起する上では有効か。(日常的にチェックしておいてもらえば御の字?)

赤羽2-65 「4.0m」 電柱に意識を集めないと見えてこないのが難点だが、メインストリートの電柱となれば、やはり目は行く。北本通りの2箇所の標示はすぐにわかった。水位を示すのテープは実に4mの高さにある。ここまで増水したら、と思うとゾッとする。

 主要道路沿い、というものの、ちょっと脇に入った辺りに設置される方がどうも多いようだ。残り4箇所の標示はいずれも地図がなければ見落としてしまいそうな存在感。川から離れると当然、想定深も低くなってくるので、3mになると、いわゆる電柱広告の上辺にテープが施されていたりするので、看板の一部と見紛う可能性が出てきて、益々存在意義が下がりそう。警戒水位然と緊張感を持たせてほしいところだが、こうした点も含め、まだ試行中、ということなんだろう。(ちなみに2m以下の場合は、青テープなし)

 川から遠ざかるほど、想定深(水位)は低くなることはわかる。だが、避難場所への安全なルートの確保、となると、川から遠ざかれば済む、というものでもなさそうだ。つまり、周辺地図を広めに把握して、どこがどの程度の水位になるか、頭の中に等高線を描きつつ避難しないといけない事態が考え得るのである。電柱の標示(想定深)をポイントで知っておくのではなく(避難場所に無事辿り着けるルートを含め)、線で結んだ想定深を知るべし、ということだろう。

 そこで、この範囲で実際に調べてみることにした次第。9月9日は、ワークショップ終了後、まずは環八通りの電柱を見分すべく徒歩で帰宅する。東本通りは、まち歩き地図で示された箇所のみ。赤羽岩淵駅近く(赤羽1-58)まで来て、ようやく3mの標示を発見。しかし、そこから先の環八通りでは、電柱が少ないことも手伝って、とうとう見かけず、赤羽ハウジングステージ近傍で再び3m標示に遭遇、といった具合。まぁ環八通りは、3mのラインということか。

赤羽1-16 「0.5m」店先の幟が標示を隠しがち。赤羽駅前は0.5m。

赤羽1-58 「3.0m」赤羽岩淵駅近くは3m。青テープが広告と一体化?

赤羽南1-4 「1.0m」こちらは赤羽駅の南口近く。1m。

赤羽2-16 「2.0m」東本通りの脇。赤羽の一大商店街「LaLaガーデン」付近は2m。

 その後は、北赤羽駅付近で2〜3箇所を探し当て、あとは新河岸川沿い、という段になったのが、9月24日(日)。天気もいいので、散歩でもしながら探すか、と考えていたら、11時半に近い時分、消防車のサイレンが騒々しく集まりだしたので、まずビックリ。程なく、ヘリの轟音も近づいて来て、河川敷の方でその音がとどまっていることに気付き、「こりゃ一大事?!」状態。ともあれ自転車を駆って、音のする方角に向かった。

 ヘリの出動に只ならぬ何か(テロ? 爆発?)を感じていたのだが、どうやら水難事故があった模様。ヘリは上空からの捜索のために出てきたようだ。現場は、新河岸川と荒川河川敷を結ぶ「中の橋」。詳しいことは結局わからなかったが、どうもこの橋から新河岸川に人が落ちて、浮上してこない云々で大騒ぎになったらしい。

中の橋からJR京浜東北線方面。救助艇とヘリ2機。

右の橋が「中の橋」。救助艇は2隻出動。

 しばらく救助艇や潜水チームの動きを追っていたが、どうも進展がなさそうなので、ひとまずその場を去ることに。ヘリの旋回はずっと続いていたが、こちらは飄々と標識探しに入る。救命ボートを積んだ警察関係の車輌やら、水難救助専用と思しき見慣れない車が通り過ぎる中、赤羽3−29、3−40でそれぞれ3m、4mの標示を発見。(この2箇所、それほど離れていないのに、1mの差が生じている!) 大洪水発生時には、さっきの特殊車輌や救助艇がどれだけ役に立つんだろう?などと思いながら、川沿いに新荒川大橋(岩槻街道)へ。橋の基点から北本通り経由で、赤羽岩淵駅の交差点まで南下。メインストリートなのだが、標示は見かけなかった。第四岩淵小学校を周回し、先の4m標示電柱を経て、再び中の橋へ。まだ捜索は続いているようだ。(朝日新聞社の記者は見かけたが、目立った報道は特になかったから、何事もなかったのだろうか?)

赤羽3-29 「3.0m」3丁目29番地は3.0m。

赤羽3-40 「4.0m」3丁目40番地に来ると、一気に4.0m!

 下図の通り、地元の想定深は概ね把握できた。新荒川大橋の基点(交番「○に×」記号)から知水資料館・河川事務所の間(新河岸川沿い)の電柱が気になるところだが、74箇所全て探り当てようとも思わないし... 半径2km程度はいずれしっかり調べておくとしよう。

住宅地図

  • 注記

・この地図上では、13箇所を表示。  の枠内の数字が想定深。 *アイコンをクリックすると、現場の画像が出てきます。

・同じ水位を線で結ぶと、等高線が描けなくもないが、ハザードマップ[PDF]で確認するのが早道か。

・筆者地元の避難場所は八幡小学校なのだが、この地図だと載っていない。(v_v) コンビニがアイコン表示で出ているのが救い。

 

赤羽北2-30 「3.0m」ここの青テープも広告の一部のような...

赤羽北2-13 「2.0m」詳細はwww.ara.or.jpへとなっているが、今はwww.ara.go.jpに変更。ヤレヤレ。

赤羽北2-13 「2.0m」左と同じ電柱を反対側から撮影。電柱が際立っている場合は標示も目立つ。

 今回の「荒川洪水防災講座」。単純な筆者は、まんまと意識触発に乗っかってしまった恰好である。ま、それは良しとして、「浸水想定深」を含むこの標示、何と呼んだらいいものか、それがわからないのが何とも。(普及啓発を進めるには、統一的かつ覚えやすいネーミングも大事な要素!)

 

第217話 あらかわ号乗船レポート(2006.9.15→17)

 9月9日は、救急の日。防災の日は9月1日だから、どちらかと言うと、1日の方がしっくり来そうだが、「荒川洪水防災講座」は9日(土)に開催された。会場は(なぜか最近になってわざわざドメインを政府系に変えた)「荒川知水資料館」(http://www.ara.go.jp/amoa/)である。(これまでは"ara.or.jp"。中立的で親しみが持てたのだが。)

 「あらかわ号に乗って、荒川の水害について考えよう」というのが触れ込みだったが、船に乗って探訪するのに加え、昼食には非常食、午後は洪水時の「浸水想定深」を実際に街路を歩いて確認しつつ避難場所へ移動、という構成で、川と街の両面から防災を考えることができる良質のプログラムだった。

 10時開会で、プログラムの説明などを受けた後、岩淵のリバーステーションに移動し、乗船。10:30前には出発し、なかなか円滑なスタート。巡視船あらかわ号に乗るのは、今回で2度目だったか。(一度は乗船したはずなのだが、不確か...) 程よい曇天で、川面の反射もない。ゆったり船外の景色を楽しめそうだ。

 往路は、そのあらかわ号の紹介、荒川の地誌・歴史、荒川下流の解説など。観光的な要素の中にも、しっかりと現実味や社会性を持たせた内容で、感心しきり。だが、話が進めば、船も進む。時速39kmというだけあって、速い速い。青水門を過ぎたと思ったら、芝川水門、都市農業公園、鹿浜橋とあれよあれよ。6月4日に自転車でノロノロ走っていた第215話 後段参照)ことを思うと、船の速達性がよくわかる。月刊誌ARAに載っている地図(お散歩マップ)を見つつ、解説を聞きながら、写真を撮り、メモを取り、などただでさえあれこれしている中で、船が速いとなると、結構大変。とにかく撮れるだけ撮って、あとで思い返せばいいか、という状態である。

 進行方向に向かって、左側の席だったので、往路(下流方向)は、荒川の東側をしっかりウォッチ。足立桜堤を見送り、高速道路の上下線2階建て構造が特徴の五色桜大橋をくぐり、すぐさま江北橋の下を抜ける。新交通システム「日暮里・舎人線(仮称)の橋桁を過ぎると、波が護岸を浸食するのを防ぐための通航ルールと標識についての話に。(参考⇒通航ルール「船舶の通航方法」 この辺りのヨシ原は、自然保護区域に重なる。ヨシの消波効果は大きいものの、船舶が大波を立てて通ると、それも帳消しになるため、水際が浸食されてしまうことになる。小台は河口から15km地点。自転車で通った時はこんもりしていてわからなかったが、川から岸を眺めると、確かにヨシが茂っていて、さらに粗朶を組んだ工作物が波を消すような仕掛けが並んでいる。川の流れの加減なのか、漂流ゴミも目に付く。この時、小台は進行方向右手なので遠くに見えるだけ。消波も大事だが、ゴミが押し寄せては自然保護も何もないだろう、と思ったり、そう言えば6月4日にここを通った時には、左下のような看板が出ていたけど、自然保護区域に対して、さらに自然再生の工事をするのはどうしたものか?と案じたり... ともかく復路にしっかり観察することにした。

河岸再生工事の現場と看板

ヨシ原・干潟・消波の粗朶の3段構え。この後方と自然再生工事の現場が重なる。

西新井橋の欄干にも注目。牡丹をあしらっているそうな。 その「引き波禁止」(ここまで)の標識が現れたと思ったら、ここはもう西新井橋。漂流ゴミ対策の一環だとは思うが、この近くに水面清掃船の拠点があるんだとか。一度、船とあわせて見学してみたいものである。

 あらかわ号には、電波の反射で水深を測る機構が付いていて、荒川下流の水深は概ね4〜7mなんだとか。進行に応じて、水深の変化が折れ線でわかるリアルタイム表示がモニタに映し出される。大した装備である。(モニタには、船首からの映像、PCと連動した画面(PowerPointもOK)なども表示できる。) 排水機場、水再生センターなどを通り、7年前に架け替えられた京成押上線の橋梁を通過。付近に生息する絶滅危惧種「ヒヌマイトトンボ」に配慮しながら慎重に架橋工事が行われたといった話を聞いていたら、ハープ橋が見えてきた。この「かつしかハープ橋」(河口から7km地点)が今回の折り返し地点。案内では、その先、河口から2〜3kmにある「荒川ロックゲート」まで行ってから、の予定だったが、臨機応変。スムーズと思われた進行が実はそうでもなかったことがわかってしまった。ちょっと残念ではあったが、21−7、つまり片道14kmを往復してくれるのだから、遊覧したと思えばちょっとしたもの。ありがたいことである。

 復路は、洪水防災対策(船上講座)&ハザードマップの紹介。洪水に備えるためには、こうした事業が必要といった調子で、要するに国土交通省の取り組みPRの場でもある。上流でできるだけブロックするのが荒川の治水理念、「低地が広範囲に広がる&人口・資産が高度集中&流量が多い」といった特性から荒川は災害ポテンシャルが高い、といった話がPowerPointとセットで続く。筆者は時折メモをとりつつも、今度は西側の景観ウォッチに余念がない。

河口から12km地点。TXは最も下流側の線路を走る。 鐘ヶ淵はさすがカネボウの社屋が目立つなぁ、とか、隅田水門付近にはちょっとした高木があってビックリ、とか、つくばエクスプレス・JR常磐・東京メトロ千代田の3線連続の鉄道橋はまた見応えがあるなぁ、とか、そっちのけ。折りよく、下りのつくばエクスプレスが走って来て、見入ってしまった。今回は、この3線の他に、東武伊勢崎線と京成2線の下を通る行程だった。タイミングがよければちょっとしたトレインビューも楽しめるのがあらかわ号の魅力である。

灯篭流しの舞台となった「千住・虹の広場」 3線を過ぎた先に、「千住・虹の広場」がある。この日は「凧まつり」が開催されていて、賑わっていたが、8月5日の夜も、灯篭流しなどが行われて盛会だったようだ。階段状になっていて、さぞ灯篭も流しやすかったことと思うが、その灯篭の運命やいかに? (詳細は、こちらをご覧ください。)

 船から見ないとわからないことは多々。特に川の漂流・漂着ゴミがどのような状態になっていて、どこに溜まりやすいか、といったことが川からの視野だと実にハッキリする。秋の荒川クリーンエイドは、概ねこの会場で予定されているが、四つ木橋〜堀切駅の辺り、河口から11km(足立区柳原)、あとは先述の小台(15〜17km)は、見受けるゴミの量に対して、会場分布が手薄な感じがしなくもない。クリーンエイドの会場設定には、川からの視点も重要ということがまず一つ大きな収穫。

 船からだと水門、干潟が目に付く。干潟ではサギがひと休みしているのを随所で見かけた。サギの餌場として干潟が健全に機能していることを示していると言えそうだ。そして干潟には"ゴミキャッチャー"(フィルター)としての役割もある。あちこちにあるのを見て、心強く思うものの、干潟があるから安心と言ってしまっては不可ない。自然力による本来の再生という点ではまず干潟が自然に形成されることが第一義。そして、その干潟からいかにゴミを除去するかが、人為による自然再生の優先テーマだろう。ゴミが掬われる(救われる?)のは確かだが、そこを生息地とする多様な生き物にとってはたまらない。干潟に漂着したゴミは放っておいて平気、という訳にはいかないのである。

左から「引き波禁止」標識、漂着ゴミ現場、送電線塔、リバーステーション。 さて、小台まで遡上してきたところで、今度は北区によるハザードマップの説明が始まる。しかし、ペットボトル、レジ袋、カップ容器等々、漂流系のゴミが下流に向かって流れていくのを目の当たりにし、またしても話の方はそっちのけ。電池切れ覚悟で何枚も撮影を試みつつ観察。江北橋から北に上った先もまだ漂流ゴミが続く。往路は気付かなかったが、足立区の新田リバーステーション近く、送電線の下付近の漂着ゴミも相当なものだった。雨天による水位上昇などもあって、上流側からのゴミの放出が増えたのかも知れないが、漂流しているエリアが局地的だったのが不思議。蛇行の角度というか、地形的な要因もありそうだ。

 そう言えば、送電線もよく見かけた。クレーン船が断線事故を起こしてしまうリスクは、荒川も例外ではなさそう。(江戸川と違い、鉄道橋が多いので、クレーンを上げての通航は事実上困難と思われるが。)

 ゴミウォッチが一段落したところで、ハザードマップ[PDF]を見遣る。よくよく見ると、市と区の境が荒川を横切るように走っていて、入り組んでいる。川口市が岩淵関緑地に、北区が川口市の河原町に境界を伸ばしているのである。(⇒参考地図

 境界線の複雑さがハザードにならなければいいが、これは両岸一体での施策をしやすくするための便法か何かということだろうか。ちょっとした発見だった。

 ちょうど12時、岩淵リバーステーション(ここは辛うじて北区。ちょっと上流側に行くと、川口市舟戸町!)に到着。帰着時刻を予定通りにするために、平井の手前で引き返した訳か。実に的確な読みである。リバーステーションが要所要所にあって、水上バスが定時運行が可能となれば、都市交通の一つの軸になり得るだろう。現行の水上バスは料金高めで、観光遊覧の性格が強いが、公共交通として位置づけるなら、また違った展開が期される。成否のカギは、コミュニティバスなどの地上の足と連携できるかだろう。水陸一体の交通網が整えば、荒川や東京の魅力もまた向上しそうである。

左手が堤防側、右手にデッキと荒川本流がある。漂着ゴミはこのように押し寄せる。 てなことを考えながら、リバーステーションのデッキ下に目を向けると、そこにも多量のゴミが打ち寄せられていて、呆然。交通網もいいが、まずはゴミの発生抑制か。秋のクリーンエイド(北区主催etc.)で片付けばいいのだが。

※この後、非常食の試食、そして、午後の部と続きますが、また回を改めてご紹介したいと思います。午後の「まるごと・まちごとハザードマップ」を使っての実地踏査は、当日のレポートもさることながら、「浸水想定深」の標識(例:左写真)が興味深く、それで一つのネタになりそうなので、現在引き続き調査中。調査結果がまとまり次第、掲載しようと思っています。お楽しみに。

  • こちらもどうぞ... ⇒ 荒川が出てくる話題

第14話 荒川河川敷を愁う / 第28話 荒川クリーンエイド’98 in 荒川赤羽緑地 / 第48話 続・豪雨と増水 / 第59話 赤羽 / 第118話 荒川流域三題

 

第216話 ビール缶の彩色(2006.9.1→3)

 好んでアルコールを摂る方ではないし、ビール党という訳でもないのだが、最寄駅のスーパーなどに立ち寄ると、何となくビール・発泡酒の類のコーナーに目が行く。この場合、嗜好云々というよりは、そのデザイン性や色合いに惹かれ、目先が行くというのがその理由。特に今夏は、高級ビールの売れ行きが好調らしく、それを支えるように、高級感を醸し出すための彩りもまた見事。「高級缶」を含め、冷えた缶ビールが並ぶ一角は、実にカラフルで華やかである。

 発泡酒も含め、従来のアルコール飲料缶とは明らかに異なる様々な彩色を施した缶が増えてきた。一般的な缶飲料と間違えないようにするためか、この店に関して言えば、アルコール系だけを固めてあるので、その傾向がよくわかる。ビールに限って言えば、色と深いに代表される色彩が高級感に一役買っている。発泡酒を含めると、緑、褐色、赤なども目に付く。ひと昔前では考えられなかったようなカラーバリエーションである。

 夏の季節感そのままの状態で、各店の陳列具合(というか彩り)を調べようと思っていたら、夏から秋への商品入れ替えは激しく、「あの色がない!」といった事態に。もっと早く押さえておけばよかったのだが、大手スーパーでは、どこも店内の撮影は不許可だし、そういった制約が店頭に掲出されていない小規模店舗では、陳列に工夫がなかったりで、その彩りが伝えにくい。(せっかく意匠を凝らしても、店に並んだ時にそれが映えないと無意味なような... メーカーはその辺りも要請しているのだろうか。)

 自分で買い込んで、その色合いを伝え得る画像、観賞に堪える画像を撮ればいい、と言われそうだが、何せ被写体が円筒形な故、光の反射が予測不能。ストックしてある缶を引っ張り出して試してみるも、昼光の下ではどうもうまく行かないのである。店に並んだ時にいい色が出るように設計されているのかどうかはいざ知らず、とにかく明るいところで素人がビール缶を撮影するのは無理があるようだ。

 結局、8月も末頃になって、とある小規模スーパーで撮らせてもらったが、こんな感じで、ちと味気ない。(高級路線ビールも埋没してしまいそう。) 初夏の候は、もっといろいろな色で賑やかだったはず。また来年、考察してみるとするか。

 ともあれ、どんな色合いや意匠の缶ビール類が世に出ているか、各社ごとに見てみるとしよう。(あいにく、ビールの味や風味についてのコメントはパス。)

  • 15年前のラインアップ(「カラーブックス ビール入門」(保育社)より引用)

  • 筆者が出張帰りや旅先で飲んで持ち帰ってきた空缶類

  • 最近〜現在発売中(夏季限定も含む)の中から、「これは!」という色調を持つ缶

 をまとめてご紹介する。

【キリン】

KIRIN ©HOIKUSHA15年前はこんな感じ。充実のラインアップである。ただこれだけあっても、缶全体を特定の色で塗る、というのは当時まだ主流ではなかった。

この中で特に目を惹くのは、このMILD LAGERの緑(ビン)。缶の方はラベルの域を出ないが、色使いは独特である。

浜麒麟「浜麒麟」は、名の通り横浜工場限定醸造品。

神戸ビール横浜と来れば神戸。「神戸ビール」の外観は実に深いブルー。

キリンヨーロッパ「キリンヨーロッパ」なるものもあった。この褐色は、ビール本体の色(ドゥンケルのダークブラウン)を表す。

一番搾り「一番搾り」が40周年な訳ではなく、東海道新幹線の開業40周年を祝した一缶。

キリンのビール・発泡酒・チューハイ


【アサヒ】

ASAHI ©HOIKUSHAキリンほどではないが、アサヒもさすが。1991年当時の色調は極めてシンプル。

道産の生北海道工場限定「道産の生」。読み仮名がないが、「どさんのなま」でいいのだろうか。

名古屋麦酒こちらは「名古屋麦酒」(1995Ver.)。やはり読み仮名がない。(1999年に買った別デザインの名古屋麦酒もあるが、より歴史のある方を掲載。)

スーパードライ2001見栄えがするデザインでもないが、記念缶なので、一応。

クラスJ缶第171話の後段(おまけ)に記した曰くつきのクラスJ。そこで供されたのがこのビール。

REDS「REDS」は赤を基調にしたラベル。1997年においては斬新だったと思う。

ビール・発泡

  • PRIMETIMEプライムタイム *PRIMETIMEのこのブルー。今夏のヒットと言えそう。

  •  *これもなかなか


【サッポロ】

SAPPORO ©HOIKUSHAアルミ地に黒字のサッポロ系よりもエビスの方が彩りは上。

東北ビール物語サッポロだけど「東北ビール物語」。

静岡県誕生120年 黒ラベルサッポロビール創製120周年と静岡県誕生120年を記念したモデル。裏を返すと「黒ラベル」。

名水生ビール元古井というところの名水でつくったそうな。名古屋の水で「名水」というのとかけているのだろう。

商品一覧

むかし恵比寿*エビスのキャンペーンで当たる「むかし恵比寿」。このデザインは秀逸。


【サントリー】

*15年前は、「モルツ」「冴」「純生」「吟生」程度。(画像省略)

モルツ寿モルツの「寿」缶。

千都京都・桂工場限定「千都」。題字は、裏千家十五世家元「千宗室」筆だそうな。(京都千年と千家をかけるとはまた...)

商品情報

  • ザ・プレミアム・モルツ *エビスが走りかも知れないが、最近の高級路線の火付け役はこのビールだろう。金と青の色使いは絶妙。(第205話(3.企業関係)でも紹介したが、味も絶品。)

 国産地ビールの缶も個性的。筆者の手元には、

阿波うず潮ビール「阿波うず潮ビール」(徳島)

独歩デュンケル「独歩デュンケル」(岡山)

があった。大手メーカーにはちょっとないイイ色である。

レーベンブロイ 世界に目を向けるとキリがないが、15年前に発刊された「THE BEER BOOK」を見る限りでは、レーベンブロイ(ドイツ)、カールスバーグ(デンマーク)、ケオ(キプロス)の3つの缶ビールの色味が気に入った。それぞれの光沢色である。

 という訳で、世界の缶ビール、今はどうなっているんだろう、と、某百貨店の地下売場に出かけてみたら、折りよく「ワールドビールフェア」なるものを実施中。と言っても、缶ビールについてはいつもと同じ扱いのようで、PRも何もなくごく普通に陳列されていた。ワールドビールはビン売りが主流のようだが、缶もいろいろ揃っていて、色合い的には、ビアハノイ(ベトナム)、ヒナノ(タヒチ)がイイ感じ。(残念ながら、上述の3缶は見当たらなかった。)

 ついでに国産の缶ビールコーナーを見てみたら、スーパーとはまたちょっと異なる趣。地ビール缶がチラホラ出ているのが目に付き、頑張っている印象を受けた。これまたビンが主流の地ビールにおいて、ここで売られていた缶入り地ビールは、越後ビール、よなよな、小江戸ビール、銀河高原ビールの4社分。でも、地ビールはやはりその土地で買ってこそ、というものだろう。

 さて、缶全体をコーティングする特殊印刷だが、これだけ普及している以上、技術的な面はクリアできているんだろう。だが、こうした光沢や色合いを出すとなると、相応の環境負荷もかかりそう。缶そのものも製品の一部だとすれば、印刷工程を含め、どこでどのように製缶したかといった情報が載っていてもいいような気がする。

・・・

 9月になったとは云え、まだまだ暑い日が続きそう。夏の余韻に浸りつつ、ビール類を選びたいところだが、商魂逞しいビール各社は、秋路線の銘柄を早々と投入中で興をそがれる。悠長なことは言っていられないんだろうけど、秋モードの演出を仕掛けて、他社に先んじようとするよりは、外気温に合った意匠のものを上手く出して、「今はこの気分!」という消費者心理に応えた方が得策のように思う。(個人的には残暑の中「秋味」を飲もうとは思わない。⇒第67話参照) もっとも、「季節の変わり目ビール」とかを出せば済む、というものでもなさそうだが。

  • おまけ...それにしても、こうしたサイトがあるのには驚いた。筆者の所有する空缶類はどの程度の価値があるんだろうか。

 

 


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